2020年は暖冬だが、昨年10月の消費増税もあり、懐(ふところ)は厳冬だ。特に外出の予定もなく、自室で寂しく週末を過ごす……という読者も多いことだろう。

そもそもミニハードって何?
きっかけとなったのが、2016年の「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」発売。これをテレビにつなぐだけで、内蔵されている『スーパーマリオブラザーズ』や『パックマン』などのゲームを遊ぶことができる。これを皮切りに、他社からも同じコンセプトのミニハードが続々発売された。本体を買うだけで、たくさんの名作レトロゲームを遊ぶことができるのがミニハードの利点である。また、ミニハードはすべてHDMI接続に対応しているため、コンポジット接続に対応していない現代のテレビや、パソコン用のモニターでも遊ぶことができる。
そこでここでは、すでに発売されている6種類の「ミニハード」を紹介していきたい。お気に入りのものを通販で取り寄せたら、こたつで焼酎をちびちびやりつつ英気を養おう。
1)いま遊んでも面白い「ファミコンミニ」

8bit機であるファミコンの性能は、現在我々が使っているパソコンやスマートフォンの100分の1にも及ばない。しかし創意工夫によりさまざまな名作タイトルが生み出され、その後のゲーム文化の礎となったのは周知の通りである。
ただ「懐かしい」だけじゃなくて、いま遊んでも面白いタイトルがたくさん存在する。これら全30のタイトルを5000円台で遊べるのは大きな魅力だ。
「ファミコンミニ」はこれが面白い!
絶対に面白いのが『星のカービィ 夢の泉の物語』。ファミコンソフトとしてかなり後期の作品にあたるため、「ファミコン世代」のゲーマーにも未プレイ者が多いのではないかと思われるが、8bit機のアクションゲームとして、これ以上はないというくらいに完成している。かわいいキャラクター、見通しの良い画面、多彩なアクション、程よい難易度、すべてにおいてアクションゲームのお手本となる出来だ。超ハードな『ロックマン2』が遊べるのも良い。徹夜で取り組むことになると思うので目薬は必須。RPGは少ないが、骨太の『ファイナルファンタジーⅢ』が入っていて遊びごたえがある。リメイクが遅れた作品なので、実は遊んだことがないというレトロゲーマーも多いのでは。
これは本当に、余談の上にも余談のようなものなのだが、任天堂の公式サイトからダウンロードできる説明書にも注目してほしい。『パックマン』や『ロックマン2』の説明書は、2種類のインクだけでゲームのキャラを鮮やかに表現していて、当時のデザイナーの創意工夫が窺える(これを「特色掛け合わせ」という)。
最近の印刷物ではこういう工夫を見ることが減ったが、このような脇役アイテムも、レトロゲームの味わいの一部なのだ。
2)通好みソフトも多い「ファミコンミニ ジャンプ」

もっとも、「ファミコンミニ」のように「すべてが名作」というわけではなく、クソゲー・バカゲーの類もラインナップされている。ダメなゲームもゲーム史の彩りのうちだ、と受け入れられるゲーマーが手に取るべきだ。
「ファミコンミニ ジャンプ」はこれが面白い!
キャラゲーとは思えない本格派のシミュレーションゲーム『キャプテン翼』『キャプテン翼2』が収録されている。スポーツチームをテーマにしたシミュレーションとしては出色の出来で、いま遊んでも面白いはずだ。『ドラゴンクエスト』があるのも嬉しいが、シリーズ第1作であり、こちらは現代のゲーマーがその気になれば1日で終わってしまう。じっくり時間をかけてプレイするゲームを遊びたいなら、『ファミコンジャンプ』シリーズに挑戦してみよう。ゲーム自体には理不尽に感じる部分もあるが、黄金期「ジャンプ」のスーパースターが揃い踏みする迫力がある。
3)遊びの王様だった「ミニスーファミ」
2017年に発売された「ニンテンドークラシックミニ」シリーズの第2弾。価格は「ファミコンミニ」を上回っているが、当時1万円以上したスーパーファミコンのソフトがまとめて遊べることを考えると、コストパフォーマンスは悪くない。スーパーファミコンの魅力といえば、グラフィックの向上ももちろんだが、同世代のゲームハードとして最高峰のサウンドが挙がる。名曲の数々にも触れつつ、「テレビゲーム」が遊びの王様だった時代にタイムスリップしてみよう。
「ミニスーファミ」はこれが面白い!
ファミコン時代にはなかった「対戦格闘」というジャンルが花開いたスーパーファミコン。幸いにもコントローラは2個付属しているので、友だちと『スーパーストリートファイターII ザ ニューチャレンジャーズ』で対戦することができる。どんどん難しくなる「格ゲー」と袂を分かってしまった人も、童心に帰って遊んでみるといいだろう。
やはりアクションゲームの割合が高いが、骨太のRPGも収録されている。大作として知られる『ファイナルファンタジーVI』が一番の目玉だが、実は「ドリル装備」などスーパーファミコン時代の裏ワザをそのまま使うことができる。
4)主流のジャンルを網羅「PSクラシック」
ライバルのソニーも、2018年12月に「プレイステーション クラシック」を市場に投入。収録タイトルは20本で、格闘・アクション・RPG・パズルと、主流のジャンルを一通り揃えている。90年代後半にリリースされたタイトルが主で、ローポリゴンで構成されるゲーム画面が味わい深い。初代プレイステーションのコントローラは持ちやすさでも知られる。基本的な設計は現代ハードでも踏襲されているため、レトロゲームとして手に取ると、その「現代」的なクオリティに感動するかもしれない。
初代プレステはバラエティ豊かなラインナップを誇っていたこともあって、「あのタイトルが収録されてないなんて!」と嘆く声も多い。収録作を変えて、もうひとつ「PSクラシック」を作ることも容易なほどだ。筆者としても、革命的な空戦シミュレータだった『エースコンバット』が収録漏れになったことを心底惜しく思っている。
「PSクラシック」はこれが面白い!
圧倒的に売れた大ヒット作『ファイナルファンタジーVII』の存在が目を引く。PS4で発売予定のリメイク版は延期が続いているが、復習を兼ねてこちらを遊んでみるのも悪くないだろう。クリアまでザックリ30時間くらいかかるので、孤独な週末にももってこいだ。当時の実験的タイトルとしては、小人を操作してサイコロを転がし、目を合わせて消していく3Dアクションパズルの『XI [sái]』が面白い。『テトリス』とも『ぷよぷよ』とも違ったプレイ感覚で、脳のうち、日常ではあまり使わない部分が活性化する。
人を選ぶゲームではあるが、気がついたら徹夜している、なんていうこともしばしばだ。
5)テレビと接続しなくても「ネオジオミニ」
1991年に発売された16bitハードが「ネオジオ」。市場ではスーパーファミコンとの競争に破れ傍流となったが、アーケードゲームとシステムを共用していたことから格闘ゲームが隆盛し、今でも一定のファンが存在する。そんなコア層を当て込んでか、2018年には「ネオジオミニ」も発売された。本体はアーケード筐体を模しており、3.5インチのカラー液晶を内蔵しているため、ゲームボーイのように、テレビと接続しなくても遊ぶことができる。
この玩具的なアイデアはコレクター心をくすぐる。別売りのHDMIケーブルやコントローラmini PADを用意すれば、他のミニハード同様に、テレビに接続して遊ぶことも可能だ。
「ネオジオミニ」はこれが面白い!
格闘、格闘、そして格闘。ときどきアクション、また格闘。そんなハードである。「ファミコンミニ」や「PSクラシック」のようなバラエティはないものの、このハードをあえて手に取るゲーマーは、そんなことすでにわかっているはずだ。駄菓子屋でもよく稼働していた人気のベルトアクション『メタルスラッグ』も遊べる。小さな画面を覗き込むようにして遊ぶのも、どこか「駄菓子屋」感があって良い。
ただし協力プレイをするためには、前述した別売りのコントローラが必要になる。本体の画面にこだわるよりも、素直に大きなテレビにつないで遊んだほうが快適だろう。
6)セガマニアも歓喜「メガドラミニ」
2019年に発売された、自称「令和初の新ハード」がメガドライブミニ。収録されているゲームタイトルは全部で42作で、「同じシリーズのタイトルを2つ以上収録しない」というポリシーがあるため、セガの看板アクションゲーム『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』は『2』が収録されている。
別売りパーツを接続することで、「違法建築」ともあだ名される異様なカスタマイズ(通称「メガドラタワー」)を再現することができる。機能は変わらないため完全な“お遊び”だが、世のセガマニアはこれに歓喜した。
「メガドラミニ」はこれが面白い!
任天堂&ソニーだけで育ってきたゲーム少年が触れることのなかったタイトルがちらほら。『ファンタシースター』や『モンスターワールドIV』は、取り立てて珍しいデザインのゲームではないのだが、セガ派以外のゲーマーにとっては「よその国のスーパーマーケット」に来たような新鮮さがある。『ガンスターヒーローズ』は普通に遊んでも面白い傑作だ。
ややマニア的な着眼点だが、権利関係の係争を経て未発売に終わったため「幻のゲームソフト」とも呼ばれるメガドライブ版『テトリス』を遊べるのは嬉しい。
スーパーファミコン版に先駆けて発売された『ぷよぷよ通』がラインナップされているのも「メガドライブらしさ」だろう。
ミニハードブームは2020年代も続くのか
レトロゲームのリバイバルブームが起こった2010年代。不朽の名作を手軽に遊べるミニハードも、ここ数年を代表するヒットアイテムとなった。2020年には『スーパー桃太郎電鉄II』や『PC原人』を遊べる「PCエンジン ミニ」の発売も予定されており、このブームは今後もしばらく続くことが予想される。
1980~1990年代をゲーマーとして過ごしたオトナなら、今回挙げたなかに「これをまた遊びたい!」と思わせるタイトルが絶対にあるはず。そんな懐かしのゲームを遊びつつ2020年を過ごすのも一興ではないだろうか。
<TEXT/ジャンヤー宇都>
【ジャンヤー宇都】
「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆
(出典 news.nicovideo.jp)